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ツチヤンの生活日記

将来にはのび太くんになりたい23歳 ♂ in 名古屋 (・土・) 。※このツチヤンはフィクションです。

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少女と夜桜 No.40

こんなことを考えている

ウチの前には川が流れていて、それに沿って桜並木が続いている。

春先になると枝先に蕾が生まれ、次第次第に膨らんでくる。その様子を川の下の空白なんていって連日更新したりもしたんだけれど、さすがにもう桜も終わってしまった。

花弁が散って新しい葉が萌え、段々と桜餅みたいな色合いになってきた。また暫くして花弁が全くなくなると、萼と葉が混ざり合って不機嫌な茶になる。そして新緑の一色になると夏になる。

今年も桜の季節には色々とあって、知り合いの親父さんが花見をしてるって聞いて飛んで行ったり、婆ちゃんと犬を歩かせたり、友人と冗句を交わしたり、桜の下でコーヒーを売ったり、そして5歳の少女と花見をしたりした。

手を繋いで、お喋りをしながら夜桜の下を2人で歩いた。頭がボクの腹の辺りにある。今年の春から小学校に上がるらしい。卒園式に皆んなで歌った歌。ランドセルを買ってもらった。繋いだ手はもう少しでも力を入れたら壊れてしまいそうだった。昨日はお母さんに叱られた。お父さんは今日はお仕事。空手を習っているお兄ちゃん。すれ違った犬と飼い主がそっくりだ。習い事のピアノで新しい曲が弾けるようになった。この前発表会をした。キラキラ光る夜空の星よ。歩幅を小さくする為に意識をする。ホットケーキを焼いた。ひっくり返した。おかわりをした。楽しげに光る声はよく聞こえる。おやつのチョコレートが好き。貰った百円玉をお菓子の箱に隠した。ボクもやったよ。おんぶして。抱き上げる。本当に同じ生き物だろうか。お兄ちゃん髪が長いね、切らないの?ゴムで髪を留めてもらった。どこまで行こうか。誕生日会をするのが楽しみ。友達をたくさん呼ぶ。お母さんがケーキを作ってくれる。通り過ぎた自動車のライト。頼りない街頭。携帯電話で時間を確かめる。今日は寒いね。園で習った英語の歌。鳴いている虫。川水の音。あの娘は石ころ。背中の体温はこの数年で何よりも優しかった。腹が減った。

喉が渇いたと言うのでウチへ寄って飲み物をあげることにした。自室に連れて行って暫く待つように言い、台所でカップにオレンジジュースを注いで戻った。部屋に入るとじっと棚の上を眺めている。
「どうしたの?」
「おにいちゃんのへやにおもちゃがあるよ」
「それがおかしいかい?」
「だっておとななのに!」
「そうか、そんな風に思うのかぁ」
笑いながらジュースを渡したら、そのままいっぺんに喉を鳴らして飲み干してしまった。少し時間はかかったけれど。

家を出て川沿いに戻ると、対岸に並ぶ提灯がやけに目に付いた。
「あっち側に行ってみようか」
「おにいちゃんしゃしんとってね」
「うんいいよ」
2人でまた手を繋いで橋を渡って行ったら、先程すれ違った犬と飼い主が向こうからやって来る。よくよく顔を見比べてみたら、そんなに似てもいなかった。


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