常々亀になりたいと放言していたのだけれど、最近それは如何なものかと考えるようになった。自分の将来の事だ、真剣に深刻に辛辣に考え抜かねばならぬ。
亀の他にもう一つやってみたい事が出来たのだ。二兎を追う者は一兎をも得ずとも言う。どっちかにせいどっちかに。兎追いしかの山。つまり右か左か選び抜かねばならぬ。慎重に選ばねば泥水にドボンだ。そうそう二兎を追う者は一兎をも…。
あ?この俚言はおかしくないか?ボクは兎を1羽だけ追いかけていても捕まえられる気が全くしないぞ。運動不足に平和ボケ。途中足が攣って逃げられることはまず間違いない。よっぽど不思議の国のアリスの方がしっかり兎を追っていけるとすら思う。ギターボーカルを目指す者はリズムをも得ず、くらいにしとこう。うん、それがいい。
将来の夢なんていうとそれを表すのが途端に恥ずかしくなる。忌憚なく発していたのはそれこそ保育園に通っていた頃くらいなんかじゃないか。ボクはアンパンマンかポケモンマスターになりたかった。しほちゃんに大笑いされてから公言するのは止めた。そうかあいつのせいか。
成人してから通っていた保育園の近くを通ったことがある。懐かしくなってつい立ち寄ってみたら、驚いたことに当時の担任の先生が花壇を手入れしていた。十何年間経過しているので相応に様相も変化しており、それに何より苗字も変わっていた。大変嬉しいことにボクのことを覚えていてくれて、会話も弾んだ。あの頃と比べて声も低くなったし何より敬語だし、きっと先生は僕以上にこそぐったい思いをしているんだろうな、なんて考えながら。
先生は昔のように問うた。
「大きくなったら何になりたい?」
僕は答えた。
「これ以上大きくなる予定はありませんよ。」
陽が斜めに差す園庭で、無邪気にはしゃぐ児童たちの中に、二つばかり笑い声が溶け込んでいった。
亀を諦めたボクは今、のび太くんになりたいと思っている。
./) /) 🌕
— つちやん (@tsuchiyan) 2016年4月18日
(-土-) 🐇
tsuchiyan0415.hatenablog.com