ツチヤンの生活日記

将来にはのび太くんになりたい24歳 ♂ in 名古屋 (・土・) 。※このツチヤンはフィクションです。

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のび太くんになりたい No.30


夏のある金曜日、待合室。

陽光は高くから差し込み、窓際に僅かにコントラストを描いている。
ガラスの向こうは揺らいでいる。
まるで蝉がその鳴き声で震わせているようだった。
だけれど屋内は静けさの音がする程、物音がない。
いや、一つだけテレビが喋っていた。

子供たちがテレビを中心に蝟集している。
皆、重要な任務言い渡されたかのように真剣な目つきでテレビを見張っている。
それに紛れてぼくも一緒に行儀よく並んでいた。

看護師さんがDVDを入れ替えると、ドラえもんの映画が始まった。
大山のぶ代の旧ドラえもんだ。
ぼくにとっては生まれた時から見ていたこれが本物。

幼子達はドラえもんひみつ道具に気を取られているが、ぼくはそうではない。
ただ顎を引いて上目でジッとのび太くんの一挙手一投足を見つめる。

のび太くんは素晴らしい少年なのだ。
人として一番に大切な惻隠の情、温度のある優しさを持ち併せている。
人に気を使ってばかりいるお陰で、平生は疲れ果てて眠ってばかりいる。
決して勉強をサボるためではないのだ。
テストの点が悪いのも、鉛筆一本で何mの線が引けるか、とか生徒全員に配布されたプリントを並べるとどれだけの面積になるか、なんて誰も気に留めないなんてないことに神経を使っているからで、決して頭が悪いというわけではない。


ぼくはのび太くんになりたいんだよね、将来的に。
なろうなろう明日なろう。
明日はのび太になろう。明日は亀になろう。


その晩。夕食をしながらTVを眺めていると、のび太くんの姿形をした声の違う少年と、ドラえもんの姿形をした声の違う猫型ロボットを登場人物としたアニメーションが放送されていた。
また、自動車のコマーシャルフィルムではのび太くんのふりをした人間とドラえもんのふりをした人間が談笑しておった。

誰だてめぇら。