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ツチヤンの生活日記

将来にはのび太くんになりたい24歳 ♂ in 名古屋 (・土・) 。※このツチヤンはフィクションです。

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成人の鈍痛 No.028

よく晴れて空は高く、陽光は燦々。
空っ風。心地よい寒気。
祭日。ある年の成人の日。

今年は、自分も成人として式に招待を受けている。
スーツを着用し、外套を羽織って家を出る。

足取りは重かった。
昨夜は旧友に再会すると思うと、気が高ぶってなかなか寝付けず、遅くまで大酒を浴びていた。
お陰で腹は焼けるようだし思考は焦点を結ばない。
熱感がする。

道中、招待状にある地図を再度確認する。
以前は気がつかなかった文句が見えた。
「20歳からは国民年金に加入しましょう」
ふざけやがって。

会場のホールには晴れ着の若人が多数立ち並び、申のようにはしゃぎまわっていた。
女性は皆、振袖に身を包んでいる。
豊かな彩色。華美。そして喧騒。
自動販売機みたいだと思った。
脇の本物で茶を買って暖をとった。

皆、再会を喜ぶ素振り。
空々しい。そんなに会いたかったんなら平生集まれば良いのだ。なんて茶を飲みながら嘯いて、いや違う。
彼らは久方ぶりに再会することによって感情を揺らしている。会えない時間が思いを育む。
つまり故意に会わずにいたのだ。
決して無精などではなく。
そうか、そうだったのか。
うん、素敵。得心得心。

満足に耽っていたが、しかし、あぁ腹痛。
手洗いに駆け込む。
長時間苦しんでいると、式は開会したようだった。
世間は便器に跨る自分など一顧だにしない。
君が代が聞こえる。天皇陛下万歳。

遅れて会場に入ると、壇上にはオッサンが屹立し、何かしら半紙を眺めながら呻いておった。
その視点はこちらに向かっていない。

嘆息しながら自分も着席する。
四周見渡すと元同級生の頭が櫛比している。
が、壇上に向かう顔はこちらにも一つとしていないのだった。
皆、電子機器をもてあそんだり、隣の者と密談しておる。

なんだこの茶番は。
むかっ腹が立ってきた。
一切を爆破してやりたい。
若人も自動販売機も便所もオッサンも君が代も何もかも。

爆弾なら丁度持ち合わせている。
昨日路地裏で拾った。

今度はオバハンの挨拶が始まった。
こちらを見ずに笑ってやがる。
偉そうにしやがって。
こちら側は上下左右を見て笑っている。
偉そうにしやがって。

ポケットから爆弾を取り出し、10分後にタイマーをセットして会場を去った。
その後のことは知らない。