夕刻。一風呂浴みてやろうと、ぽちっ、と湯のすいっちを押してぴっ、なんて可愛らしい擬音を鳴らしてみると、妹君が御姿を現しやがり一言。
「今入ろうと思ってたから早く出て」
その言を咀嚼してみるも、わたくしは疑問符を浮かべている。
「なんで風呂の時間を制限されにゃならんのだ?」と返すも、
「今自分が入ろうと思っていたのだから、お前が入るなら早く出るのは当然のこと」なんて仰る。
ちなみに兄のわたくしはお兄ちゃん、ではなく平生お前、と呼ばれている。
「そんなことは知らんから好きに入らせてもらう」申し上げると、
「おい、なら入る時間を決めてけ」なんて責められる。
ちなみに兄のわたくしは兄貴、ではなく平生おい、と呼ばれている。
「そんなもん気分次第で時間なんか前後するさ」
「なら自分が先に入るから入るのを止めろ。自分はこの後用事がある。だから入浴を譲れ。」なんて抜かしやがります。
「なら20分であがるよ。」
「わかった、20分以内に風呂を空けろよ。」
「その20分には身体を拭く時間は含まれるのか?」
「うるせぇ早く入れ」
「…。」
それにつけてもこの妹君は何故こうも偉そうに入浴を譲れと言ってのけるのか。
風呂は全人類に平等のはずである。
しかし浅学なわたくしと違って妹君は大学生様である。
もしもしかしたら、納得はいかないけれど、わたくしのほうが道理を間違っているのかしら?なんて疑心に駆られて結局のところ湯は譲ってしまった。
鬱憤。わたくしは、電話をかけた。
「すみません、粗大ゴミを1つ引き取って欲しいのですが。」
「はい、可燃ですか?不燃ですか?何を捨てられるのでしょう?」
「妹を一台、引き取っていただきたくて…。これはどちらなのでしょうか?」
「そうですねぇ、私は萌えるゴミだと思いますねぇ。」
電話を叩き切ってやった。
足元を見ると妹君の手提げ鞄が寝転がっている。
二、三度踏みつけてから自室へ戻った。
Going My 愚妹。
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