我が家の前には川が流れていて、橋がかかっている。
その袂には春先になると何匹か亀が現れる。
天気のいい日には川水に浮かび、時々手足をばたつかせて進む。
土手を舗装したコンクリートに上がり、日に当たっているものもいる。
アメンボや小魚も一緒に泳いでいる。
それを見て僕はいいなぁと平和な気持ちになる。
自分も仲間に入れて欲しいと心から思う。
秋には、台風などで川が増水する。
すると、亀たちは一斉に流されてしまう。
台風一過が訪れ、川の水が引いても毎日のように見かけた亀たちは皆そこにはもういない。
しかし、数日もするとまた亀は元のところに戻ってくる。
亀はエライ奴なんである。立派だ。
鶴は千年、亀は万年なんていうが本当だろうか。
もし1万年生きられたらどうだろう。
特に変わりがないような気もする。
人間の寿命を80年として考えて比べると圧倒的に長いが、そもそも、年というのは人間が作り出した時間という文化であり、亀からしたら知ったこっちゃないのである。
ただそこにある日常を、時間という概念で囲繞すると、80年であれ、1万年であれ、陽が昇り、沈む中で、飯を食って眠って糞をしながら懸命に生を全うするだけだ。そこに感傷はない。
ただ、自分の死後という未来にも連続して存在する個があると思うと、物悲しさを感じるのは当然だろう。
僕は新世界の亀になりたい。
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